症例は8年前に大動脈弁狭窄症に対し機械弁による大動脈弁置換術を受けている59歳男性である.半年前に完全房室ブロックを発症しペースメーカー植込み術が施行された.前日より呼吸困難と胸部圧迫感が出現したことからかかりつけ医より,急性心筋梗塞を疑われ当院へ紹介され入院となった.来院時,発熱と炎症反応の上昇があり心臓超音波検査とCTにより人工弁への疣贅の付着と弁輪周囲に膿瘍腔と思われるスペースを認め,さらにValsalva洞の瘤状拡張を伴う弁輪部膿瘍を伴うことより人工弁感染の診断で準緊急的に手術を行った.人工弁弁輪には多量の疣贅が付着し弁輪部膿瘍腔は中心線維体から膜様部中隔方向に向かって心筋内に進展し,左右交連部付近を中心にValsalva洞には瘤様に拡張していた.膿瘍腔郭清の後,弁輪部破壊が広範で弁輪部周辺の心筋も脆弱であることからBentall型手術による基部再建は困難と考え,Nakamuraらの報告による“Graft insertion technique”による基部再建の方針とした.表裏を反転させた5 cm長の人工血管(graft)を大動脈基部より左室内に挿入し,左室流出路においてpledget付き3-0ポリプロピレン糸をgraft内側から刺入し,心外膜側をTeflon felt stripで補強しながらマットレス縫合9針で固定し,さらにその縫合線を連続縫合で補強した.左室内に挿入したgraftをLVOTより引き出し短くトリミングした後にあらかじめ作製したComposite graftを端々吻合した.右冠動脈はボタン状にくり抜きgraftに吻合したが,左冠動脈主幹部を癒着剥離中に損傷したため同部を結紮した後に大伏在静脈-左前下行枝バイパス術を施行した.感染弁除去と弁輪部を含む心筋内膿瘍腔の郭清によって健常弁輪組織が失われ脆弱となった基部であったが止血のための追加縫合を必要とせず確実な再建が可能であった.“Graft insertion technique” はいまだ広く認識された術式とはなっていないが,感染による弁輪部破壊が高度で脆弱となった大動脈基部を再建する優れた術式であり,安全,確実に手術を遂行できる術式として大きな価値を持つと考える.
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Niitsu et al. (Thu,) studied this question.
www.synapsesocial.com/papers/69a7603fc6e9836116a2ccc8 — DOI: https://doi.org/10.4326/jjcvs.55.19
Hirokazu Niitsu
Shota Ogura
Tomoyuki Hotta
Japanese Journal of Cardiovascular Surgery
Saku Central Hospital
Saitama Prefectural Education Center
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