米国の保険市場は,その歴史を紐解くと,大数の法則の適用が認められやすい保険(マスリスク保険)を認可保険として想定し,そうでない保険(非マスリスク保険)を非認可の保険として規制の上で区別してきたと考えられる。米国の財物保険では,統計データに基づき保険金・保険費用の期待値を算出し,保険料を算出することが前提とされ,消費者保護などの観点から認可保険としての規制が施される。一方で,自由料率を前提とする海上保険のほか,認可市場では調達が難しい企業向けハイリスク保険などに対応するため保険会社と保険契約者の間で自由に契約交渉が行われるe&s保険を中心とする非認可市場も並行して形成されてきた。これに対して,日本の保険実務では,大数の法則の適用を前提とする統一的な保険理論が強く意識されてきたことから,標準化の要請がドグマとしてより強く作用し,企業向けハイリスク保険の領域で柔軟な契約設計が制約されている可能性がある。長い年月を経て日本と米国との間では,保険実務の慣行に大きな差が生じたのではないかと考えられる。
Ichiro Kobayashi (Mon,) studied this question.