本稿は,地域労働市場論の研究蓄積を新たな方法論的視座から再解釈し,農村工業化を資本の論理と農村の論理が調和した時空間として捉える試みである。地域労働市場は,農家労働力を主たる給源とし,全国労働市場と異なる特殊性をもつ労働市場として理解されてきたが,現在では分析概念としての有用性が低下している。本稿では,アンリ・ルフェーブルの「リズム分析」を援用し,農村工業化の時期において農業の循環的リズムと工場の直線的リズムが折り合っていたことを明らかにした。その状況の下で,山形県最上地域では,三世代同居による世代間役割分業によって農業所得と農外就業を持ち寄る多就業構造が実現され,兼業農家が世代を再生産することが可能になっていた。しかし,1990年代以降,農外就業機会の変質と農業の衰退により,兼業農家の多就業構造は解体され,地方圏の衰退が進行している。本稿は,資本の他律的リズムに対抗する自律的リズムの重要性を提起し,雇用によらない生活の可能性を模索する方向性を示唆している。
Takashi Nakazawa (Thu,) studied this question.