要旨 【目的】 本報告は,ラオス人民民主共和国で実施された国際協力事業を事例に,低・中所得国における断片的な救急搬送体制の統合の成果と限界を事後的ケーススタディとして検討し,体制が持続しなかった要因を整理するとともに,一般化可能な教訓を提示することを目的とした。 【方法】 2021年から2024年にかけて,筑波大学・社会システム総合研究所・ミタパープ病院が連携し,通報番号の統一,指令センター設置,電子搬送記録の導入,教育研修を実施した。評価には,通報・搬送記録,搬送過程の量的記録,電子記録の入力状況,会議議事録・財務資料,現場観察記録,関係者の発言記録の6項目の一次資料を用い,6つの視点から整理・分析した。 【結果】 指令センターの稼働初期には出動の効率化,現場到着時間の短縮,医療機関との連携強化,記録データの標準化等の効果が得られた。しかし,財源不足,人材流動性の高さ,情報技術への適応の遅れ,省庁間の協働の弱さ,住民参加の不足,法的枠組みの欠如に加え,新型コロナウイルス感染症の流行の影響により2024年に運用が停止した。 【結語】 本事例では,救急搬送体制統合が短期的な運用改善を示した一方,制度化の遅れにより体制を持続できなかった。低・中所得国では,指令機能を医療機関に依存させず,国または自治体の枠組みとして構築し,運営主体・財源・人員配置を含む制度化への移行設計を実証段階から組み込む必要がある。
Suzuki et al. (Mon,) studied this question.